い空

40

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なんだか、もう終わりかななんて―――
そんなことは思った。

「あたた、離してよぉっ、この変態!」

遠くから聞こえてきたその声に私と佐伯さんは顔を向ける。
残念ながら私は縛られた姿では声のする方が物が邪魔になって見えなかった。

「ふぅん、なるほど、ね。」
「先生!?」

大人の男の人の声と、そしてそれに呼応する佐伯さんの言葉に私は、心がときめくのを痛いほどに感じていた。

「変だとは思っていたが、こういうことだったとはね。二人とも、私の女に手を出すというのはいい度胸じゃないか。首謀者は君か? 律子くん。」
「なっ、こ、これはわがままな菜穂を教育して先生に献上する為に―――」
「取り繕う必要はない。」

高鳴る心臓。
それは男の人の声を聞いているからだけではない。
私の体を知る堂本だったからこそ、私の心は激しく鼓動を繰り返す。それこそ、気を付けていなければ失禁してしまいそうなほどだった。

「痛いってば、はなしてっ!」
「君は佐伯くんの妹―――であっていたかな。あの子の代わりにあそこに繋がれたくなければ大人しくするんだ。」

佐恵ちゃんの声。
何をされているのか分からないが悲鳴が地下室を木霊する。

「先生、佐恵は関係ありません。」
「あるだろ、上にあった作りかけのDVDを見つけたぞ。あんなものまで作っておいて“献上”とは笑わせるな。それに私が―――」
「うっ…」
「私がこういう拷問まがいのやり方は嫌いなことを佐伯くんはよく知っているだろう?」
「―――はい」
「ともかく、覚悟はできているんだろうな。しばらく反省するまで下の地下牢で飼ってやる、来るんだ。」
「…はい。」

 *

何かが崩れ去るとき。
それは一瞬の出来事だった。
私の見えないところでさらにここより地下に二人は連れて行かれ、拷問器具に括り付けられたままの私は痛みの少ない体勢でじっと部屋の奥の方から聞こえてくるウインチの駆動音と、がらがらと五月蠅い鎖の音を聞いていた。

「菜穂。」
「は、はいっ」
「大変だったな、さっきはすごいことを言ってたじゃないか。」
「え?」
「“人間扱いされたくない”だったか?」
「あ、そ、それはその―――」

パチンパチンと留め金が外され私の体が自由になっていく。
貞操帯のフィッティングの最中だったからだろう、私には貞操帯も填められておらず本当の意味でそれで全身何も身に着けていない裸の状態だった。
思ったより―――
恥ずかしくない、むしろ。

「あ、あの―――」
「ん?」

その時の私は、大胆だった。
拷問器具から解放された私はすぐにスーツ姿の堂本に抱きついていた。
それも抱きつくだけではなく、体を堂本にこすりつけるようにしながら両足を堂本の体に絡めようとする私。
それなのになぜか目からは涙がぼろぼろこぼれていた。

「あの、その私―――」
「いい子だ。寂しかったか?」
「―――はい」
「…」
「その、私、ひどいことをされて…」
「わかってる。気づいてやれなかった私も悪かったな、まぁ、女同士でされるのもいい経験になっただろ。案外、楽しめたところもあったんじゃないか?」

そんなことを言われてもわからない。
堂本先生は私がこんな目にあっても全然平気なのだろうか。

「…」
「私に抱かれてみないかね?」
「…え?」
「私の女になれとそういっているんだ。もう失うものは何もないだろう? むしろ私に気に入られることで得られるものは多いんじゃないかな。」
「そ、それはその…」
「私は、菜穂のことは気に入ってるんだがな。」
「えっ」

そうは思えない流れの中で私はそういわれ戸惑っていた。
好きだと言われたわけでもないのに、好意を見せられただけで舞い上がってしまうのは、私の思い上がりなのかもしれない。

「あ、あの…」

それでなくても私は女性器を弄ばれ―――
何度も何度も高められ続け、そして貞操帯なんてものまで経験させられた私の性はすっかりと目覚め、男というものをを求めるようになっていた。
だから…
目の間に男性がいると言う刺激を、必要以上に受け止めた。
私に好意をもってくれているならと考えると、その先にあるのはどうしようもない、みだらな欲望だけになっていたのだ。

「だい―――抱いてください。」

先生の胸にそっと顔を近づけて小さな声でささやく私。
心が切なくなる。

「―――いいだろう。その身も心も私の完全な所有物となることを誓うなら、私のそばにおいておいてやろう。」
「はい」
「よし、じゃぁ、カメラの前で全裸で誓いの言葉を言うんだ」
「は、はい…」
「ふふ…」

カメラと言う言葉に、今まで先生から受けてきた辱めが一気に洪水のように私の記憶がよみがえってくる。
その時見た堂本の表情は、間違いなく、いままでで一番邪悪なものだったのに、私は先生の下に戻ってこれたことに不思議な安心感を感じていた。

「おいで」

先生は、私を連れて上の階へとあがっていく。
どんな道を通ったのかも記憶に残らない。胸はどきどきしているし、私の腕をつかむ彼の大きな手に戸惑いながら、手を引かれるまま、ただ何もいわず顔をうつむけたまま淡々と彼に従った。
すぐにでも抱いて欲しい。
そんな気持ちが心の中に充満するのは初めてだった。

「…あ」

着いた先は周囲が明るく、そこが地上だと言うことが分かる。
でもそこは見たことのない部屋だった。

「二階に連れてきたことはなかったな。」
「は、はい。」
「いい部屋だろう?」

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如月 純史 -