い空

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前へ...

一糸まとわぬその姿でベッドの端に腰掛け、私はその目の前に用意されたものにごくりと生唾を飲んでいた。

「いまさら私の趣味を知らないでもないだろう?」
「は、はい…」

目の前に置かれているのは金属の貞操帯。
昨日まで佐伯さんに苦しめられていたそれそのもの。
前後に巨大なディルドーが取り付けられ、一度履けば、性器と肛門にはそのディルドーが奥深く埋まりこみ、鍵を掛けられれば自由意志で逃れることもできず、女の体の陰部を開発し続ける魔性の道具。

期待していた訳ではない。
それを身に着けた後の自分のことを想像してのことだった。

「そ、その…」
「これでいつもここを刺激して、いつ抱かれてもいいように準備しておくんだ。」

貞操帯は愛の道具ではない。
調教であり懲罰であり、隷属という言葉の具現ですらあるだろう。
修二様にとって貞操帯は私の為ものではなく、自身の一時の快楽のために私という女を都合いい状態にしておきたいだけ。
つまり私に抱かれる為だけに生きろということ。

「これがこれからのお前の普段の下着だ、入れられてないと落ち着かないぐらいに考えるんだぞ。それから、いつでも俺が望むときに俺の相手をするんだぞ?」
「は、はい…」
「どんな時でも、だ。いいな?」
「はい」
「ほら、履くんだ。」

一度、身に着けたことのあるそれ。ディルドーを入れたままにしなければならない感覚はぞっとするほどなのに、それをうまく伝えることもできず私はそれに片足ずつ足を通していく。
先生に抱いてもらえるようになれば…
そう考えて必死に耐えてきたこの貞操帯の責め。

「ほら!」
「履きます、履きますから…」

怒り出しそうな修二様を前に私はあわてて貞操帯を手に取る。
私は決心を決めて両足の間の貞操帯を引き上げ、ディルドーの丸い先端を股間と肛門にあてがうと、私は覚悟を決める。体を押し広げられる感覚を感じながらその男性器さながらのディルドーをゆっくりと体の中に挿入していく。
雁首のあたりが入ると後はすぅっと体の中に納まっていく。
根元までディルドーが埋まると恥ずかしい二つの穴が器具に押し広げられ、満ち足りた感覚が充満する。
太くて固い男の人の性器さながらの造形物。
それがあそこや、お尻の穴にまで簡単に抵抗なくずっぽりと入ってしまう自分の体に私はもはや泣きそうになっていた。

「ちょっと貸してみろ」
「はい…」

ある程度まで挿入すると、彼はさっさと奥まで入れない私に業を煮やし、私の手を振り払うと自らの手で貞操帯のベルトをぐいと引き上げ、小さく悲鳴を上げる私にかまわずウエストベルトをぐいっと締め上げるとバチンと留め金を留める。

「あっ、ひっ…」

背中の方でカチャカチャと金属音と共に今度は施錠音がする。
貞操帯特有の着用後の施錠音、それはそれ自体悪いものではない、なんというかある種の安心感のようなものはある。
強制させられているものは酷いものとはいえ、女の性を刺激するためのもの。
ディルドーを締め付ける感覚は、日頃から感じるには強すぎて心地よいとはいえないものの、それ自体は男の人に“可愛がられている”ときと同じもの。
女の子は大なり小なり、男性に可愛がられることは喜びにしかならないのだ。

「どうだ?」
「は、はい、大丈夫です―――」
「いい子だ。」

頭をぐりぐりと撫でられた私は、はめ込まれたばかりの貞操帯のディルドーを締め付け、愛液であそこをべとべとにしてしまう。
鍵の掛けられた責め具からは逃れられることはない。
それ以上なにかしてもらえるわけでもない。

「私はすぐ東京に戻る。今度はお前も連れて行ってやろう。すぐ準備をしなさい、今日は仕事はしなくていい」
「は、はい」

女の性を刺激して性欲のスイッチをいれっぱなしにするための器具。
それを体に取り付けられたままの生活を受け入れなければならないことに、私は、気がおかしくなり始めていた。

 *

修二様にもいろいろお仕事もあるのだろう。
私はそれきり放置され、私はその部屋にあった三面鏡で久しぶりに身だしなみをしっかりと整えることにした。

髪を整え―――
先生に言われたとおり私は適当な服を見繕った。
二階のクローゼットの中には女物の服もかなりあり、私に合いそうなものも多い。
以前ここに通っていた女性がいたのか、サイズも多少ごちゃごちゃだ。
ここまでくると先生の過去を疑いたくもなるが、そこはぐっとこらえておく。
先生は今日中にこっちを経つつもりらしい。
東京に行くのだから、多少きれいにして行くのもいいだろう。
そう思ったのだがやることにも限りがある。ある程度、整えると私はティッシュで貞操帯の両脇からあふれていた愛液をふき取り、気分を変えようと部屋を出た。

寝室をそういう目で見たことはなかったけれど、寝室というのは男女の情事に使う部屋であるわけで、あまり心の落ち着ける部屋ではないと思う。

気分を変えるには外の空気にあたることだろうかと、そう思い、私は下に下りると人目につきにくいところを選んで縁側に座り込んだ。
しばらく、ぼぉっと空を見上げながら時が流れるのを待つ。
股間には二つのディルドー。
座っているだけで恥ずかしくなってしまうようなものが私の体の中にある。
あまり人前に出たいとは思わなかった。

「柊さん。柊さん!」
「あ、はい」
「ど、どうしたんですか? その格好。」

村井さんに呼び止められた時、私はドキリとさせられた。
この人は悪い人ではない、私のことを考えてくれる―――とてもいい人。
わかってはいる。
外から戻ってきたばかりと見えて私と先生のことをまだ知らないようだった。

「そ、その先生からいただいて―――」
「そうですか。よくお似合いですよ。と、そうじゃない―――例の件ですが。」
「え…?」
「金属カッターの話です。借りてきましたよ」

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如月 純史 -