い空

43

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村井さんが手に持っていたのは、巨大なニッパのお化けようなもの。
それをみて以前に貞操帯をはずせないか相談していたのを思い出し、私は今見につけている貞操帯を背中で施錠している鍵のことを思い出す。
同時に股間のディルドーのことも―――

「あっ…」

思わず強く股間を意識して私は顔を赤くしてうつむいてしまう。
村井さんは貞操帯のことを知っているし、私の体の中がどうなってしまっているかも知っている。
そう考えると余計に恥ずかしかった。
それにタイミングは最悪だ。

「よければすぐにでも…」
「あ、あの、それが―――」

いろいろ言い訳を考えようとしてもとっさにはいいものが浮かばない。
忙しいからまた今度というのも変だろうし、恥ずかしいからというのも変な話だ。

「どうしたんです、人気のないところにでも…」
「あ、あの―――今はもう。」
「あと、その服装もあるのでしょうが、背中側多少形がわかるようになってしまわれてますよ。他の人に気づかれていないと良いのですが」

手をとられたその瞬間私はそれを振りほどき、
信じられないようなことを口にしていた。

「い、いいんです。」
「は?」
「今はもう、このままでいたくて―――今は入れられたまま鍵を掛けられるのが好きなんです。だから、その…」
「…」
「かまわないでください。」
「…わかりました。ここは人目も多い、いつでも力になります。」
「はい、…ありがとう」

私の言葉に村井さんは少し驚いていたが―――
それでも何か思ったよりもあっさりと引き下がり、少し悲しそうな表情をしていた。
それはそう、頼んだのは私なのだ。
村井さんのそんな表情に気づいた私はあわてて声をかける。

「あ、あの!」
「はい」
「村井さん、本当にありがとうございました。いつか、お礼に―――伺います。」
「いえ、お気になさらず」

それでも言わないよりはいい。そう思った。
でも、村井さんが去り。
私は自分の口にした言葉の重さにいまさらに気づいていた。
入れたまま鍵を掛けられて過ごしたいなんて、そんなわけないに決まっているのに私は思わずそんなことを口にしていた。
背中の鍵のことを気にして少し手をあててスカートを整える。
村井さんは今頃私のことを、入れられるのが大好きな変態な女の子だと思ってしまっていることだろう。
でも事実と異なるかといわれれば―――
私にもよくわからない。

「菜穂ちゃん。」
「え?」

しばらくして再び掛けられた声。
先輩使用人の里元さんだった。

「堂本先生に言われて化粧品のカタログをご用意いたしました。他にもお洋服などございますのでごらんになるようにとのことです。」
「…あ、はい」
「なーんか、待遇違うけど、もしかして菜穂ちゃんゲットしちゃった?」
「え…?」
「お仕事なしで東京に行く準備だって聞いたし、そうなんでしょ? 堂本先生とうまいことやっちゃったんじゃないの?」
「あ、そ、それはその。はい…」

小さな声でそう肯定の返事をすると、
目を丸くして里元さんが興味深そうに私に声を掛けてくる。

「でも、気をつけたほうがいいわよ。」
「え?」
「先生とうまくやるのは難しいみたいなの。ほら、そうは見えないけど結構気難しいところもあるみたいだし、ってその辺は菜穂ちゃんのが詳しいのかな?」
「…」
「あら、興味ありげね。」
「はい」

その後、里元さんに聞いた話は驚くような内容。
だった。

というのも、堂本先生―――修二様に恋人が出来たのは私が初めてではないらしい。
年齢からいってもそういう人の一人や二人いてもおかしくないだろうし、今ご結婚されていない方が驚きとも思える。
議員ともなれば声を掛ける女性も多いだろう。
だから恋人がいたこと自体は不思議ではないと思う。

「まぁ、詳しくはしらないけど…」
「はい」
「女性関係はあやしいわね。以前にもあなたぐらい年の離れている子と仲良くしていたことがあったみたいなんだけど、東京で別れてそれきりだそうよ。」
「そう、ですか」
「それがよくわからないのよねぇ。急にぱっと消えちゃうの、まぁ、その辺は佐伯さんに聞いてみるのもいいかもね。あの人、昔先生と付き合っていたこともあるみたい。」
「…!」

ちなみに堂本先生は東京にも自宅がある。
そちらはこっちみたいなお屋敷ではないようだが国会があったり年末年始の際などにはそちらで暮らしていることが多いようだ。
議員ともなれば付き合いも多いのだろう。

「そう、ですか。」

思ったより、たいした内容じゃない。
その時の私はそう思った。

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如月 純史 -