い空

45

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「でも、できるだけ言いつけには…」
「ひとつ聞く。」
「…?」
「それがどんな命令であっても、私の命令に決して逆らうことの出来ないような。そんな従順な女になれるなら、なりたいと思うかね?」
「え…?」

「もし菜穂にそのつもりがあるなら、そういう女になれるよう、今から身も心も私だけのものとなるよう染めてやる。」
「染める―――ですか?」
「そうだ、この余計なことを考える頭を徹底的に洗脳し、私を絶対的な存在として植え付け、私の元から離れることなど頭の片隅に浮かべることもできないぐらい身にも心にも徹底的に調教をいきとおらせる。」
「…」
「もちろん奴隷として主人に仕える為の教育もだ。だが―――もしそうなるのなら」

ぐっと彼の顔が私に寄る。
思わず、私と唇が触れそうな距離の彼に―――
私は心を震わせた。

「お前を一生、愛してやろう。」
「は、はい―――」

その問いに私はそう答えた。
即答であると言っていい考えることなどしなかった。
なぜなら、先生は私にもうひとつの、他の選択肢など与えなかった、だから私はそれを選ぶしかなかったのだ。そして、それは―――私にとってそんなに悪い選択肢でも、辛い選択肢でもない。
私の心には―――
彼のたった一つの言葉だけが残っている。

「それは、肯定と受け取っていいな?」
「はい―――」

好きだと、私は言った。
それがらしくないとしても私にとっては精一杯の告白。
それに彼は、私を愛してくれると言った。

「あ、あの…もう一度言ってもらえますか?」
「…ん?」
「そ、その…、あ、愛してるって…」
「一生、お前を愛してやる。まずは―――」

私は―――
目の色を変えた彼に引き込まれていた。
私の奥深くを見つめる瞳。

「お前を犯す存在を好きになれ。」
「は、はい―――」
「それがバイブでも痴漢でもだ。お前を犯したものならたとえそれが人参でも敬愛し、尊敬し、そして頭を下げるんだ。いいな?」
「はい…」

私は―――
今も股間を襲うディルドーをきゅっと締め付ける。
甘くにじむ快楽が私を襲う。
そんな中で聞かされたその言葉に私は、快楽を感じてしまう。

 *

夜の道を走る車。
私は、先生の言葉を信じ―――
先生の体に寄り添いながら先生の愛を感じていた。

別に先生に従順に従える女になれたわけではないけれど、先生は私がそうすることを拒みはしなかったし、私は行き過ぎないように気を使いながらも、初めてこうして自由に触れられる男性の体に私は酔っていた。
腕を抱える感覚も、胸に顔を寄せる感じもすごくいい。
スーツの間から入れた手で、彼の胸板に触れていると自分が女に生まれてきた幸福と言うものを実感できた。

「…」

そして、この男性は―――
私のことをあんなに激しく求めてくれた人だ。
犯される気持ちよさは、決して性的な快楽だけではない。相手が、自分のことを求める便りになる男性だというだけで、ペニスを締め付ける私の股間は精液を搾り取ろうと必死になってしまう。
貞操帯のディルドーに悩まされる感覚とはまた別の…
全身が求め、股間が男の人のものに絡みついていくような愛の感覚。

堅いもので肉を犯される感覚が愛だと言えば、
みんな口先ではそんなことはない、愛はもっと高尚なもので、心と心の交わりなんだと言うだろうし私もそれに賛成する。でも、私は行為のときに感じたのが愛そのものなんだと感じて疑わない。

「あ、あの―――」
「どうした?」
「いえ、なんでも…」

人工的な器具で延々と犯され続けながら、
私はこの人に抱かれたいとそう思った。
それがどちらかといえば好きだからとか一緒になりたいからとかそういう理由からではない、完全に性的な欲求だったせいか、私はそのまま思いとどまりディルドーに思いをぶつけることにしてしまう。

体になじみ始めたディルドー。
それを私はしっかりと感じ始めていた。

「これから行くお店はお前がいま履いてる貞操帯を作ってもらったところさ。そろそろ刻印入りのがあってもいい頃だからな。」
「…刻印入りですか?」
「名前が掘り込んであると自分のって感じがするだろ?」
「名前…」

都会に向かって走る車。
繁華街を通ると異様ともいえる数の人、人、人が道を行く。
人がいればそれだけ中でこうして辱められている自分が誰かに気づかれているのではないかと不安になってしまう。

車の着いた先。
息が詰まるほど人が多い通りから少し入ったその路地にも、考えられないほどの人が行き来しビルの中に吸い込まれていく。

「…ここさ」

そして車を降りるとすぐ側のビルの地下を降りた先には薄暗いそのお店があった。
牢獄を思わせる鉄格子の入り口からしてその異様さを感じさせるそのお店は、中に置かれているものも変わったものばかりがそろったお店だった―――
所狭しと陳列された女性を調教するための数々の道具。
そのどれもが、ちょっと性に興味をもった程度の子が買って行くとは思えない、ずっしりと重そうな手錠や巨大なディルドといった上級者向けのものばかり。お屋敷の地下室でいろんなものを見せられた私でも震えが止まらない。

「あ、あの…?」
「ここはSMホテルなんかにも道具を下ろしたりしてるんだ。とはいえ大半は金持ちの酔狂でさ、女を性奴隷にして飼うのは君が思っているよりずっと普通に行われていることなんだよ。」
「その、私には―――」

私には、―――なんだろう?

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如月 純史 -